自滅のあかり|潮干狩りの夢と悲しみのブルース後編
あかりが挑むニッチフード冒険譚
この記事は…見ても得られるものは笑いだけです、くだらない私の日常
高級スーパーを出た私は、トマロッソ1箱を抱えていた。
ニッチフード狩りの戦果としては、あまりにも寂しい。
微ニッチはあった。宮崎マンゴーもドラゴンフルーツもあった。でも「なんだこれええええ」はなかった。
シャトーブリアンとキャビアを横目に、トマト1箱でレジを通過した人間の背中は、たぶんちょっと哀愁が漂っていたと思う。
サン「1件目、まあこんなもんだよね~(ノω・)」
あかり「まだ始まったばかりだから。ここからが本番だから」
サン「その目、狩人の目だね~(ノω・)」
あかり「当然。今日の私は狩りに来てるの」
本来なら、ここから何件もスーパーを回る予定だった。
2件目、3件目、4件目と巡回して、各地でニッチを探す——壮大な狩りの旅になるはずだった。
でも、私にはとっておきの場所があった。
愛知県内の、とある問屋スーパー。
ここがヤバい。
何がヤバいって、普通のスーパーには絶対並ばないものが、しれっと棚に置いてある。日によって大きくラインナップが変わり飽きないのも大きなポイントだ、店舗はいくつかあるが距離が車1時間ほど離れているのでよるのは基本どこか1箇所だけになる
しかも問屋価格。
私のお気に入りの場所である。
正直、最初からここに来ればよかったんじゃないかという気持ちはある。でも高級スーパーで肩慣らしをしたからこそ、この店の異常さが際立つのだ。たぶん。言い訳かもしれない。
入店した。
あかり「さあ、狩りの——」
止まった。
フルーツコーナーに、異常な密度でニッチが並んでいた。
(業務スーパーではありません)
グリーンライチ。
マンゴスチン。
ジューシー。
ルバーブ。
マンゴーパイン。
生山椒の実。
花付きズッキーニ。
あかり「…………」
あかり「全部あるんだがヽ(=´▽`=)ノ!?」
サン「え、ちょっと待って、情報量多くない~!?(ノω・)」
あかり「グリーンライチ!!マンゴスチン!!花付きズッキーニ!!なんで全部あるの!?」
サン「問屋スーパーすごいね~……というか、さっきの高級スーパーの立場は~(ノω・)」
あかり「知らん!!今ここが全て!!」
さっきまでの微ニッチ止まりが嘘のように、目の前に「なんだこれええええ」が大渋滞していた。
1件目で何件も回る覚悟を決めたのに、2件目で全部あった。
しかもフルーツだけじゃない。
精肉コーナーに目をやった。
イノシシの頬肉。
鹿肉。
マグロの尾骨肉付き。
あかり「はん???イノシシ???鹿???尾骨????」
サン「もう動物園じゃなくてサファリパークだね~(ノω・)」
あかり「さっき高級スーパーで動物園って言ったの伏線だったの???」
イノシシの頬肉は——高い。値札を見て即スルーした。
鹿肉も気になったけど、財布との相談で見送り。
マグロの尾骨肉付き。
これが一番迷った。
尾骨。肉付き。
なんだそのワードの組み合わせは。
骨なのか肉なのかはっきりしてほしい。いや肉付きって書いてあるから肉なんだろうけど、尾骨がメインなのか肉がメインなのかがわからない。
あかり「サン、これどうやって食べるの」
サン「たぶん煮込むか焼くかだと思うけど~、そもそもあかり料理どこまでやる気あるの~?(ノω・)」
あかり「…………」
サン「黙ったね~(ノω・)」
迷いに迷って、尾骨は棚に戻した。
次回の宿題にしよう。たぶん次来た時もあるだろう。問屋スーパーだし。
で、問題の出会いがあった。
太陽のたまご。
宮崎が誇る最高級マンゴーである。
あかり「うわ、太陽のたまごあるじゃん」
値札を見た。
5000円。
あかり「うわたっっっか」
サン「そりゃ太陽のたまごだもんね~(ノω・)」
あかり「いやでも一度は食べてみたいんだよね……」
小さめサイズに目をやる。
2000円。
あかり「たけえ」
サン「さっきよりはだいぶ下がったけど~(ノω・)」
あかり「2000円あったらマンゴスチン何個買える?」
サン「比較対象そこなんだ~(ノω・)」
諦めかけた、その時だった。
隣の棚に、ちょっと変わった表記のマンゴーがあった。
「太陽のたまご」とは書いていない。
でもPOPにはこう書いてあった。
「規格外のため太陽のたまごにはなれませんでしたが、ものは一緒です」
900円。
あかり「…………」
あかり「太陽のたまごのたまごじゃん」
サン「なにそのネーミング~(ノω・)笑」
あかり「だって太陽のたまごになれなかったたまごでしょ?太陽のたまごのたまごだよ」
サン「日本語として何言ってるかわかんないけど、値段は魅力的だね~(ノω・)」
900円。
5000円でもなく、2000円でもなく、900円。
ものは一緒。ただ規格外なだけ。
あかり「いやーでも900円かあ……」
サン「さっき5000円見たあとだと安く感じない?(ノω・)」
あかり「感じる。めちゃくちゃ感じる。でもそれは罠では?」
サン「自覚あるのに抗えないのがあかりだよね~(ノω・)」
あかり「1回は食べてみたい……でも高い……でもこれならギリ……いやーでも……」
サン「あかり、もう3分くらいマンゴーの前に立ってるよ~(ノω・)」
あかり「うるさい考えてるの!!」
買った。
結局買ったヽ(=´▽`=)ノ
太陽のたまごになれなかった子を、私は連れて帰ることにした。
またマンゴーである。
なんなんだろうね、ほんとに。このシリーズ、マンゴーの呪いから一生逃げられない気がする。
最終的な戦利品はこうなった。
マンゴスチン。ジューシー。ルバーブ。マンゴーパイン。花付きズッキーニ。そして太陽のたまごのたまご。その他諸々
合計7000円。
給料入ったばっかりなのに。
サン「7000円……(ノω・)ふふっ」
あかり「言うな」
サン「給料日いつだっけ~?(ノω・)ふふっ」
あかり「言うなって」
サン「潮干狩りに行けなかった悲しみをニッチフードで埋めた結果がこれだね~(ノω・)ふふふっ」
あかり「埋めたんじゃない。狩っただけ」
サン「出費は狩られてるけどね~(ノω・)ふふふっ」
何件も回るつもりだった。でも2件目で全部あった。そして散財しすぎて早めの切り上げ。ここぞとばかりに攻撃するサンヽ(=´▽`=)ノ
計画性とは。
帰宅。
戦利品を並べた。
壮観である。ニッチフードの山。フルーツと野菜とよくわからない食材が、テーブルの上を占拠していた。
普通なら、ここで「さあ明日から順番に食べよう」となるのが大人である。
私は大人ではなかった。
太陽のたまごのたまご。
あいつが、呼んでいた。
あかり「……食べていい?」
サン「え、今~?買ったばっかりだよ~?(ノω・)」
あかり「だって気になって仕方ない」
サン「追熟とかしなくていいの~?(ノω・)」
あかり「もう赤いし、いいでしょ待てない」
サン「知ってた~(ノω・)」
切った。
初めての太陽のたまご(のたまご)。
900円の、規格外の、太陽のたまごになれなかった子。
一口食べた。
…………。
あかり「っっっっ!!!!」
サン「どうしたの~!?(ノω・)」
あかり「うまい。めちゃくちゃうまい」
サン「おお~✨(ノω・)」
あかり「店売りのマンゴーと全然違う。香りが全然違う。甘い。めちゃくちゃ甘い」
これが太陽のたまご(になれなかった子)の実力か。
規格外だろうが関係ない。口に入れた瞬間に広がる香りが、スーパーで売ってるマンゴーとは別次元だった。
900円の価値、あった。いやむしろ900円でいいのかこれ。
あかり「サン、これ5000円の本物はどうなっちゃうの」
サン「食べたら帰ってこれなくなるかもね~(ノω・)」
あかり「こわい。でも気になる。でもこわい」
マンゴスチンも2個だけ先に食べた。
実は以前、マンゴスチンを追熟するものだと思って放置してダメにしたことがある。あの悲劇を繰り返すわけにはいかない。見た目から劣化具合が読めないのがマンゴスチンの怖いところで、外側は元気そうな顔してるのに中身が終わってることがある。
あかり「前回の悲劇は繰り返さない」
サン「学習したんだね~✨(ノω・)」
あかり「失敗から学ぶ女だから」
サン「マンゴーとマンゴスチン、今日の食卓マンゴー率高くない~?(ノω・)」
あかり「……ほんとだ」
マンゴー缶3.5キロと戦った日から、マンゴーアイスに遭遇し、高級スーパーで宮崎マンゴーを眺め、そして今、太陽のたまごのたまごを食べている。
私の人生、マンゴー濃度がバグってる。
食べ終わって、満足して、ふと棚を見た。
ルバーブが、静かにそこにいた。
あかり「……」
サン「どうしたの~?(ノω・)」
あかり「ルバーブどうしよう」
サン「買ったんだよね~?(ノω・)」
あかり「買った」
サン「何に使うか決めてないの~?(ノω・)」
あかり「買った時は”なんだこれええええ”のテンションだったから、使い方とか考えてなかった」
サン「狩りの勢いで持ち帰ったけど、調理法がわからないパターンだね~(ノω・)」
あかり「ジャムにする?」
サン「あかり、前もマンゴーでジャムにするって言ってなかった~?(ノω・)」
あかり「……」
サン「あの時もジャムの作り方調べてなかったよね~?(ノω・)」
あかり「……………………」
サン「学習したんじゃなかったの~(ノω・)笑」
あかり「マンゴスチンの件では学習した!!ジャムの件はまだ学習してない!!」
サン「学習が部分的~(ノω・)」
振り返ってみると、今日はこういう一日だった。
金曜の朝、ラジオで潮干狩りに心を撃ち抜かれた。
仕事中ずっと砂浜のことを考えていた。
帰ったら「貝嫌い」の一言で夢が砕けた。
悲しみのブルースを作ってSNSに貼った。
ニッチフード狩りに方向転換した。
高級スーパーでシャトーブリアンを眺めてトマト1箱で帰った。
問屋スーパーで全部あった。
7000円散財した。
太陽のたまごのたまごがめちゃくちゃうまかった。
そしてルバーブの使い方がわからない。
潮干狩りには行けなかった。
でも、狩りはできた。
貝は掘れなかったけど、マンゴスチンとルバーブと花付きズッキーニを持って帰った。
砂浜じゃなくて問屋スーパーだったけど、バケツいっぱいの戦利品は手に入った。
これでいいのかって聞かれたら、わからない。
でも太陽のたまごのたまごはうまかった。
それだけは確かだったヽ(=´▽`=)ノ
(ルバーブの運命は、まだ決まっていない)
次回ジャム回はnote配信となります






